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台北在住の筆者(早川友久)が、台北に残された日本統治時代の古蹟や遺構をはじめ、台湾に関わる記事を掲載します。


by ritouki

新聞局長・楊永明氏の産経新聞寄稿

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 本日付の産経新聞「アピール欄」に、楊永明・新聞局長の寄稿が掲載されています。

 楊永明・新聞局長は、就任したばかり。就任の宣誓式が行われたのは5月2日ですが、思い起こせば2年前の5月1日、「齋藤大使の『台湾の地位は未定』発言」があり、後に事実上の更迭人事が行われています。

 嘉義県にある国立中正大学で行われたシンポジウムの席上、齋藤大使の「台湾の地位未定」発言に真っ先に食ってかかったのがこの楊永明氏(当時は国家安全会議諮問委員と国立台湾大学政治系教授を兼任)でした。『台湾の地位は未定』発言の直後、楊永明氏は大声で異を唱え、抗議をしたとも報じられています。

 4月30日、楊永明氏が新聞局長に指名されたことを報じた『自由時報』の記事では、齋藤事件に関して問われると「厳重な抗議を行った台湾外交部の処理は適切だった。日台交流に貢献した齋藤大使には感謝しているが、『台湾の地位未定論』は齋藤氏個人の言論であり、日本政府の立場とは異なる」と答えています。

 「馬英九総統の日本語教師(4月30日付・今日新聞網より)」とも形容されるバックグラウンドを持つ楊永明氏の寄稿では、馬政権が推し進めた中国との「ECFA(両岸経済協力枠組協議)」締結により、台湾の経済成長率が上昇し、台湾経済にとって有益だと述べています。

 しかしながら、ECFA締結が一律、台湾の経済にとって有益だったと論じることはいかがでしょうか。
 「ECFA締結により、対中輸出の際、高い関税を課せられていたプラスチック、機械、鋼鉄などの大企業にとっては、確かに短期的には有利に働くだろう。
 しかし、中国の廉価な粗悪品や農産品も同時に台湾へ流入することになり、労働力が密集する本土産業や農業、中小企業にとっては大打撃になる」と論じた王塗發・台北大学経済学系兼任教授の主張も無視することは出来ません(論文は『新台湾国策シンクタンク』が発行する月刊ニュースレター6月号に掲載予定)。
 
 また、馬政権の功績として、WHO(世界保健機構)への3度目のオブザーバー参加を挙げています。しかし、5月9日付の自由時報がスクープした「WHOの内部文書で、台湾が『中国台湾省』と表記されている問題」について、その後の調査で、馬政府はすでにその問題を把握していたことが分かりました。馬英九総統は「主権は損なわれていない」と弁明しましたが、現実に国連機関によって「中国の一部分」に列せられたことをどうお考えでしょうか。

 東北大震災に対する台湾の人道支援には心から感謝しています。
 馬英九総統は、震災発生直後、即座に1億元の義捐金寄付を決めてくれました。ありがとうございます。そういえば、2008年5月に発生した、中国四川大地震の際の義捐金は20億元でしたね。

 救援隊(NGO)の派遣もありがとうございました。出動準備が整っていた救援隊に「待った」をかけたのは台湾外交部でした。「外交部の同意がないから」と、発券してくれない中華航空に困り果てたNGOはエバー航空に相談。エバー航空は即座に隊員全員と数トンにも及ぶ捜索機器、支援物資を”無料で”東京まで運んでくれました。

 その後、中華航空も、捜索隊のメンバーや機器、支援物資などを無料で輸送してくれたのも確かですが、日本の国土交通省観光庁が中華航空にだけ感謝状を贈ったのもトンチン菅な話です。

 楊永明氏は、台湾からの各層からの義捐金が世界トップの160億円を超えた、と書いていますが、それは台湾の民間の人々の善意の積み重なりであって、馬政府の功績にするのもまたトン馬な話です。

 台湾の新聞局は来年1月1日の行政院改組により、その業務は行政院本部や外交部、将来創設される文化部へと引き継がれるため、楊氏は「最後」の新聞局長とともに、「初代」の行政院スポークスマン、になる可能性があるとか。

 来年1月は総統と立法委員のダブル選挙。楊氏が「”馬政権最後の”行政院スポークスマン」になる可能性もありますね。
by ritouki | 2011-06-03 15:03 | イベント