台北事務所の活動をお伝えします


by ritouki

330の前夜に

 解せないことが一つある。

 それは、Facebook上でよく見かける日本人の書き込みで「台湾のことは台湾人が決めるべき、だから日本人の私は外から見守りたい」「外国人である日本人が台湾のことに口出しするべきじゃない」といった内容だ。

 彼らが台湾のことを好きかどうか、関心があるかどうかはここでは関係ない。
 重要なのは「台中服務貿易協定」が日本には無関係だと思い込んでるところにある。無関係だと思い込んでるということは、恐らく服貿協定の内容を知らずに「台湾のことは台湾人に任せよう」とノー天気に言っているようにも思える。
 将来の台湾や日本への影響など考えもせず、服貿協定の内容など知りもせず、ただただ無関心だと思われたくないがためだけに「決して無関心じゃないですよ」と逃げ口上を用意しているだけにも思えるのだ。しかし、そうした考え方は非常にユートピア的な、理想主義的なものと断じざるを得ない。

 なぜ台湾の学生たちは立法院を占拠してまで、この服貿協定の発効を阻止したいのであろうか。
 もちろん、服貿協定の発効が現実になれば、台湾の根幹企業ともいえるサービス業に大量の中国資本が流れ込み、中国人の安価な労働者が大挙し、台湾経済を席巻するだろう。
 その結果、価格競争に耐え切れない台湾企業は力尽き、台湾人の就業機会は奪われ、最終的に「安かろう悪かろう」の中国式サービスが蔓延する台湾社会になるおそれも十分に考えられる。
 さらには「投資移民」という名のもとに、父ちゃんが董事長、母ちゃんが総経理、息子が店長のような「三ちゃん企業」を作り、ごくごくハードルの低い投資をすれば、そのまま台湾に移住出来てしまう。

 ただ、最大の問題はそうしたところにあるわけではない。
 服貿協定が発効し、大量の中国人労働者が押し寄せ、経済を牛耳られ、移民が増加すればどういう結果が出来するか。通婚を繰り返して中国大陸系住民が増加すればどうなるか。
 結果、台湾は「明日のクリミア」になるだろう、というのが最大の問題であり、日本も無関係ではいられない部分なのである。

 中国大陸系住民が増加し、彼らの工作が浸透して中国との統一機運が生まれたら欧米や日本も反対できない「住民投票」で人民の意見を聞く、という流れが出てくるだろう。
 その結果、大量のロシア系住民が「ロシア編入賛成」を投じたクリミアのように「民主的かつ平和的な方法」で台湾は中国に統一されることになる。
 一発のミサイルも打たず、一滴の血も流さず、「多数決」という民主主義的な方法で中国は台湾を手中におさめる。こうしたシナリオが高い確率で引き起こされるであろう服務貿易協定について、「日本には関係ないから、日本人は口出すべきではない」となぜ高みから見下ろすような言い方をするのだろう。

 結果的に、台湾が中国領になった場合、日本に影響はないのか?日本とは無関係なのか?
 毎日たくさんの原油を運ぶタンカーが通る台湾海峡は中国の内海となり、西側のバシー海峡も中国の管轄下となる。遠回りする場合の燃料費は、高騰する保険料はどうするのか。原油に限らず、南シナ海のシーレーンを通って輸入されてくる多くの物資に頼っている日本経済は喉元を抑えられることになるというのに。

 台湾が中国領になった場合、中国の海軍は自由に太平洋への出入りが可能になる。今でさえ、中国海軍の潜水艦やらに尖閣諸島近辺をウロチョロされているのに、出入り自由になってしまったらどうするのか。翳りが見え始めたアメリカの軍事力は太平洋防衛を任せることが出来るのだろうか。中国は本気で「太平洋を米中で分割統治しましょう」と言い出しかねない。

 「台湾のことに外国人が口出すべきじゃない」とか「台湾のことは台湾人が決めるべき」などというユートピア的な理想主義はやめたほうがいい。
 ではなぜ中国や韓国は、靖国神社という至極国内的な問題に首突っ込み、口を極めて罵ることが出来るのか。なぜ長年アメリカは毎年、年次教書という名のもとに様々な要求を日本に押し付け、国内法改正や制度改革を強制するのか。
 それが国際社会で、それが国際政治だからではないのか。つまり、要はそれが現実だということなのではないか。

 理想は理想で素晴らしい、しかし、この世界は理想的には出来てはいない。
 それこそ生き馬の目を抜くような厳しい国際情勢の中を泳いでいかなければならない。

 台湾が直面している服貿協定は現在の台湾だけの問題ではなく、将来の台湾、台中関係、日台関係、アジアどころか世界の安全保障にさえ影響を及ぼすだろう。

 だとすれば、ユートピアのようなことを言っていないで、現実を見据えて物事を言ってほしいと願うのはあながち無理な相談ではあるまい。仮に無関心であるならば無関心でも結構、黙っていていただくだけだ。

 しかしながら、わざわざインターネット上で「私は外国人だから何もしません」とか「外国人じゃなかったら私も参加したのに」などと逃げ口上を並べた正義感ぶって「中立宣言」などを振りかざすのはご勘弁願いたい。
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by ritouki | 2014-03-29 23:51 | イベント