本日午後4時より、公益財団法人交流協会台北事務所の地下一階ホールにて、平成26年春の叙勲で「旭日双光章」を受章された蔡焜燦先生への叙勲伝達式が執り行われました。
蔡焜燦先生は長年連れ添ったおばあちゃんとともに出席。また、ご家族や親戚、たくさんの台湾歌壇のお仲間、そして羅福全・元駐日大使ご夫妻や許世楷・元駐日大使ご夫妻、陳南天・台湾独立建国聯盟主席、李雪峰・台湾高座会会長らそうそうたるメンバーが駆けつけました。
伝達式はまず、大橋光夫・交流協会会長による祝辞を樽井澄夫大使が代読してスタート。長年にわたり蔡焜燦先生が尽力されてきた日台交流への貢献を、蔡先生が詠んだ和歌を取り上げつつ紹介しました。
続いていよいよ叙勲の伝達。まずは御名御璽と安倍晋三総理大臣の署名が入った「勲記」が樽井大使から授与されます。引き続き、蔡先生の胸に勲章が付けられると、面映ゆそうに会場の皆さんへ披露されました。
そして蔡先生のスピーチ。もともと、スピーチ原稿を提出してほしいと交流協会側から要請があったそうですが、「とてもじゃないが文字に出来るような感動ではない。この感激は原稿になどできない。とにかく『感慨無量』なんだ」とお話しされました。
そして「ここまで長生きできたのも食事が良かったおかげ。ずっと食事を作ってきてくれたおばあちゃんにも拍手をお願いします」と、苦労を共にしてきたおばあちゃんを労いました。
「とはいえ、まだまだ私にはやることが残っている。日本の若者たちに台湾というものを教えていかなきゃいけない。そして台湾の若者たちには日本というものを教えなきゃならない。まだまだ死ねません。皆さん、どうもありがとう、これからも一緒にがんばっていきましょう」と締めくくりました。
ただ、蔡先生のおしゃべりは止まりません。「そういえば君が代は歌わないの?この前の大相撲で優勝した白鵬、国歌斉唱のとき口を真一文字にして歌ってなかったよ。あの野郎、テレビ越しでもなんでもぶっ飛ばしてやりたいよ。じゃあ皆さん君が代歌いましょう。台湾歌壇の李英茂さん、こっちへ来て指揮しなさい」ともはや蔡焜燦節絶好調。
会場の全員で君が代を斉唱し終えると、李英茂さんが「日本万歳!天皇陛下万歳!」。蔡先生から「こらこら、台湾万歳を忘れちゃいかん」ということでもう一度「台湾万歳!」。
さらに蔡先生が一言。「手のひらを見せるのはバンザイじゃなくて降参だ。本物のバンザイはこう!」
記念撮影の段になり、檀上から会場をぐるりと見渡す蔡先生。やおら「こりゃビックリした!なんでですか!」と驚きの声。会場には、お祝いのため今朝の便で台北へ駆けつけたという明石元紹氏の姿がありました。明石元二郎・第7代台湾総督のお孫さんであり、今上陛下が最も親しくされる御学友でもあります。
思いもよらないサブライズに蔡先生の声も震え気味。「なんて悪い人だ。年寄りをびっくりさせて」と大感激されたご様子です。
樽井大使ご夫妻、ご家族や親戚、来賓、台湾歌壇のお仲間などと記念撮影が行われていきます。ところで蔡先生が写真におさまるときは、レンズから顔をそむけている場合がほとんどです。決して斜に構えているわけではありません。
「台湾の白色恐怖時代を生き延びてきた我々は本能的に写真というものが怖いんだよ。あの時代、冤罪だろうがでっち上げだろうが、誰かが特務にパクられたとする。パクられた奴と私が一緒に写っている写真があったらもうそれだけでお陀仏なんだよ。だから、なるべくなら写真を撮られたくない、という恐怖が今でも抜けず、無意識にレンズから顔をそむけてしまうんだ」。台湾の多くの人々がそういう時代を生きてきたのです。
伝達式は1時間ほどで無事に終了。
通常であれば、叙勲伝達式当夜、陽明山中腹にある交流協会台北事務所代表官邸で祝賀晩餐会が開かれるのがならわしとなっていますが、「今回の叙勲は、支えてきてくれた皆さんのおかげ」という蔡焜燦先生ご自身の希望もあり、蔡先生が皆さんを招待するというかたちとなりました。
国賓飯店とならんで「蔡家の台所」でもある兄弟飯店で、蔡先生自慢の台湾料理がテーブルに並びます。
「世界一美味しい」台湾の老酒での乾杯でスタートした祝宴には総勢70人近くが出席。2時間あまりの祝宴はあっという間に過ぎ、午後8時すぎにお開きとなりました。
でもやっぱり最後はまた「手のひらを見せるのはバンザイじゃなくて降参だ。本物のバンザイはこう!」。
蔡焜燦先生もおばあちゃんもこれからもずっとお元気で。
今回の叙勲、誠におめでとうございます。