李登輝元総統の南部視察に同行 3日目
2012年 05月 18日
嘉義市内の耐斯王子大飯店で朝を迎えた李登輝元総統はホテルを午前10時過ぎに出発。見送りのため、ロビーに整列して迎えたホテルスタッフとにこやかに握手してお別れの挨拶。

車列は嘉義市を出て嘉義県中埔郷頂埔村にある「彦廷農場」へと向かう。市街地を抜けるとすぐに緑豊富な田畑の風景が広がり、南部に来たことを実感させてくれる。
25分ほど走って農場へ到着。昨夜、歓迎の晩餐会を主催した張花冠・嘉義県長もここから合流。こちらの農場では有機栽培と最先端の科学技術を組み合わせて最新のキクラゲ栽培が行われている。工場と見紛うような広い屋内で、温度管理から収穫後の加工までが機械化されており、清潔な環境で効率的にキクラゲが生産されている。

李登輝元総統は、担当者の説明にうなずきながら「農業も従来の方法にあぐらをかいているのではなく、常に革新を進めるべきだ」などと話した。

1時間ほどの視察を終え、一行は同じく嘉義県の番路郷公田村「生力農場」での昼食会へ。ここはもう阿里山へ向かう中腹と言ってもよいほど。
窓からは雄大な阿里山の姿が、と思いきや霧に包まれてその姿は見えず。さすがに山の天気は変わりやすく、昼食の最中でも、太陽が顔を出したかと思えば、すぐに雨が降り出すなど、落ち着かない天候であった。


総統を出迎えたレストランのオーナー夫妻は、総統が在任中に一緒に撮影した写真を用意していた。「ぜひサインを」と依頼された総統は、ご自身の座右の銘でもある「誠実自然」の文字を残した。


昼食はさすが阿里山のお膝元らしく、阿里山烏龍茶の乾杯でスタート。ワラビや山蘇、地鶏など地元の特産がテーブルを飾った。
昼食後はメディアを前にミニ記者会見。嘉義県の農業などの印象について語った。特に、茶葉に関しては、台北市長時代に台北郊外の猫空の茶葉改革を進めたこともあって知識や経験が豊富。同席した張県長も脱帽した様子であった。

午後は、台湾新幹線の嘉義駅にほど近い朴子市にある知恵遅れや障害を持つ子供たちのための施設「敏道家園」を訪問。
2000年、スイス人の神父によって設立された施設で、最大200名の子供たちが全寮制で暮らせるになっているという。そんな子供たちが、賛美歌の演奏で総統を歓迎。目を細めて聞き入っていた総統に、訪問の記念として子供たちが作ったカップが贈られた。
また、総統からは施設に対して寄付が贈られた。


館内を視察すると、ちょうど子供たちは「アフタヌーンティー」の時間。総統も「およばれ」して席に加わり、子供たちとの記念撮影となった。

これにて南部視察の行程は終了。
一行は台湾新幹線の嘉義駅へと向かい、16時9分の新幹線で台北へ戻った。
途中、台中駅からは曽文恵夫人が乗車。台中に住むお嬢さんのところへ一週間滞在した帰りだという。「いくら娘のところでも、何日もいるとやっぱり台北の自分の家へ帰りたくなるわ」と笑いながら話す奥様と合流し、総統もうれしそう。

17時36分、予定通り台北駅に到着し、3日間にわたった南部視察の旅は幕を下ろした。

