台湾大学の「磯小屋」へ出掛けてみませんか
2012年 06月 07日
「蓬莱米の父と母」の原稿が書き上がったら次に必要なものは写真です。
台北の気温は連日30度近くになり、もはや初夏を通り過ぎているような気もしますが、今日は乾燥しているので気持ちいい日和です。
台湾大学正門を抜け、舟山路と呼ばれる脇道へ。校舎が林立し、自転車や徒歩の学生たちが行き交うエリアを抜けると、急に目の前に広い田畑が広がります。これが台湾大学農芸学部の実験農場です。
そして実験田の隣りに通称「磯小屋」、正式には農芸学部の「育種準備室」と呼ばれる建物が見えてきます。MRT公館駅から台大のキャンパスを通って15分ほど。遠くに台北101が見えるのは、ここが紛れもなく台北市内だという証拠です。
築80年以上という磯小屋は台湾大学の建築物の中でも最古参。台北高等農林学校、台北帝国大学、国立台湾大学と移り変わる歴史を見つめてきました。
磯永吉は台北帝大教授と中央研究所農事試験場の技師を兼任していました。在りし日の磯は、この小道を通って帝大と試験場(台大とは現在の基隆路を挟んだ向かい側にあった)を往復する日々を過ごしていたのでしょう。
3月に銅像が設置され、月末に訪問した際にはまだ整理も手付かずだったのが、昨日撮影に行った時には室内の展示も整理され、ボランティアスタッフ(農芸学部の”往年の”卒業生)が待機していました。入り口では、許文龍さんが製作した磯永吉と末永仁の胸像が迎えてくれます。
室内には磯が実験で使った道具、米のサンプル、タイプライターなどが展示されています。今後、破損がひどい箇所は補修し、さらに整備を進めていく予定だそうです。
この小屋の管理を担当している劉さんは、学生時代にこの部屋の中から磯の手書き原稿を発見しました。その後、磯や末永の功績を研究し、現在では磯小屋の管理を任されているとか。
3月に訪問した際は、一般公開はしていないとのことでしたが、現在では整理がかなり進んだということで、毎週水・土・日に公開しているそうです。参観時間は午前9:30〜12:00、午後1:30〜4:00まで。予約なしで突撃しても大丈夫そうな雰囲気でしたが、念のため予約しておいたほうがいいでしょう。公式サイトはこちらです。
磯永吉の胸像は、蓬莱米の種籾が栽培された陽明山の竹子湖にも置かれています。こちらには蓬莱米の原種田を管理する事務所の建物が今も残っているとか。時間を見つけてそちらにも出掛けてみたいと思います。
ところで、蓬莱米はご飯としてだけでなく、我々の大好きなものの原料としても使われています。台湾の国民的ビールといえばもちろん「台湾ビール」。この台湾ビールにも蓬莱米が使われているのです。台湾に駐在しているアサヒビールの方に伺ったところ、世界中ほとんどのビールで、原料に米が加えられているため、決して珍しいことではないのだとか。ただ、なぜ原料表記を「米」とせず、わざわざ「蓬莱米」と記載してあるのかは謎です。台湾ビールの本社に問い合わせたものの、分からずじまいでした。
ほぼ毎夜のようにお世話になっている台湾ビールに「蓬莱米」が使われているという事実も、お恥ずかしい話ながら、数年前に許世楷大使に教えてもらうまで気付きませんでした。
ともあれ、身近な台湾ビールにもこんな日本と台湾の密接な関係が隠されているんですね。今度、台湾ビールを飲むときにはぜひ思い出して下さい!