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台北在住の筆者(早川友久)が、台北に残された日本統治時代の古蹟や遺構をはじめ、台湾に関わる記事を掲載します。


by ritouki

台湾点描「蘭嶼島のタオ族と後藤新平」

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 6月下旬、期末試験が終われば台湾の大学は長い長い夏休みに入ります。新学期の始まりは9月半ばから、実質3ヶ月近いロングバケーションです。そのかわり、冬休みは旧正月期間の2週間程度、春休みはありません。

 台湾の本島について言えば、幸運なことに東西南北、ほとんどの土地へ出掛けることが出来ました。ですので、今年は離島にも目を向けようと思っていました。台湾には代表的な離島として、澎湖島、金門馬祖、緑島、小琉球などがありますが「行ってみたい!」と思っていたのは台湾本島の南東に位置する「蘭嶼」です。

 蘭嶼には台湾に14族いる高砂族のなかで、唯一の海洋原住民といえるタオ族(中国語ではヤミ族とも呼ばれる)が住んでいます。特長ある形の船でトビウオ漁に出る光景は、ポスターや映像でよく使われるので、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
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 蘭嶼は日本時代「紅頭嶼」と呼ばれ、鳥居龍蔵によって進められた調査結果が現在も貴重な資料として残っています。写真は後藤新平男爵が島を訪れたときの一葉。三角の帽子のようなものをかぶり、褌をしめた姿は、いわばヤミ族の正装といえます。右側の中折れ帽をかぶった人物が後藤新平です。
 台湾日日新報が1912年(大正元年)10月から11月にかけて報じた記事によれば、後藤新平は民政長官退任後、久しぶりに台湾を観光目的で訪問。紅頭嶼の場合は、船で高雄を出発後、紅頭嶼へ立ち寄り、台東の卑南へ。その後、火焼島(現在の緑島)へ赴く予定が、台風のため予定を変更して基隆へ帰港したとあります。
 写真のキャプションには「民政長官」と記載されていますが、この時すでに後藤は台湾を離れていました。民政長官時代に紅頭嶼を訪問した記事は、少なくとも現時点では見つけられなかったことを付け加えておきます。
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 蘭嶼までは台東から船で3時間弱、飛行機なら30分程度ですが、20人も乗れないプロペラ機のため予約が非常に困難です。

 台湾本島とは異なる文化に満ちた蘭嶼には、タオ族のトビウオ信仰に根付いたタブーや言い伝えも豊富のようで、現在でもタオ族の人々は自身の文化を大切に守りながら生活を送っているようです。蘭嶼へ出掛ける場合には、事前に勉強しておかなければ楽しさも半減してしまうのは間違いないでしょう。

 と、ここまで書いておきながら、残念なことに今年の夏休みも思いのほか忙しく、まとまった日程が取れないので実現は難しそう。いつかのお楽しみです。
by ritouki | 2012-08-12 18:55 | イベント