日本政府が台湾の弁護士資格を承認
2014年 06月 03日
これまで日本政府は「前例がない」「日本と台湾は国交がない」などという理由によって、台湾の弁護士資格を有していても、日本における「外国法事務弁護士」資格を認定して来ませんでした。
「外国法事務弁護士」とは、外国の弁護士資格を持つ人を法務省が認定し、日本国内において法曹行為(弁護士活動)が出来るようにした制度です。この資格が認定されれば、諸外国の弁護士資格を有する人も日本国内で弁護士活動を行ったり、法律事務所を開設したりすることが可能となります。
反面、この資格が認定されなければ、たとえ外国の弁護士資格を有していても、日本国内では弁護士資格がないとみなされ、一切の弁護活動が出来ません。
実際、台湾政府は日本の弁護士資格を承認し、日本の弁護士が台湾国内で活動することを認めており、少数ながらも、日本の法律事務所が台湾へ進出しています。
こうした状況は、日本人が台湾へ入国する際はノービザだったのに対し、台湾人が日本へ入国する場合はビザが必要とされた時期が長く続いたように、台湾に対して一方的に不利益を与えるものでした。
しかし今般、台湾の弁護士資格が日本政府によって承認され、外国法事務弁護士資格が付与されたことにより、日台間の不動産売買や企業進出、大規模投資など、法律分野においてますます台湾人弁護士が日本で活躍する場が増えることになるかもしれません。
以下は記事の抄訳です。
台湾出身の女性弁護士、孫櫻倩さんが一年半の努力と交渉により、ついに日本の法務省から正式に「外国法事務弁護士」として登録され、昨日(5月28日)午後、東京で宣誓が行われた。また、同時に日本弁護士会に加入する資格も得られたことで、今後、日本国内で台湾人弁護士が業務を行う道が開かれたことになる。
孫櫻倩弁護士は、台湾大学法律系卒業後、東大で修士を取得。その後、日本最大級の弁護士事務所「西村あさひ法律事務所」に入所し、10年以上にわたって日台間の企業間投資や合併の案件に携わってきた。
2012年末、孫弁護士は法務省へ外国法事務弁護士の登録申請を行ったが、日本政府は「これまで台湾の弁護士資格を認めたことがない」として申請を却下される。ただ、日本政府が却下としたのは「日本政府は台湾を承認していない」というのが本当の理由だったようだ。そのため、西村あさひ法律事務所では特別対策チームを結成し、孫弁護士の申請を受理するよう日本政府へ要求したという。
西村あさひ法律事務所によれば、台湾政府は日本の弁護士資格を承認しており、日本政府が台湾の弁護士資格を承認しないことは、明らかなWTO(世界貿易機関)規定違反だと指摘している。
つまり、WTOが定めた外国法事務弁護士に関する規定には、「外国法事務弁護士の資格を申請するには、その弁護士の所属する国家(台湾)が、申請先の国家(日本)と国交があるかどうかは関係なく、所属国(台湾)がWTO加盟国であればそれで足りる」とされており、台湾はWTO加盟国なのだから、日本の法務省が孫弁護士の申請を却下することはWTO規定違反だというもの。
一年半の努力を経て、法務省はついに今年4月11日、孫弁護士の登録申請を許可。昨日(5月28日)には宣誓が行われ、正式に日本における外国法事務弁護士資格を取得するとともに、東京第一弁護士会会員となった。
孫弁護士に交付された「外国法事務弁護士登録通知」の国籍欄には「台湾」と記載され、「原資格国」欄にも「台湾」と記載されている。
孫弁護士は宣誓の際に代表として挨拶し、日本政府が台湾の弁護士を外国法事務弁護士として登録してくれたことに感謝するとともに、この承認は日台間の法律分野における相互理解の第一歩であり、重要な意義を持っている、などと話した。
孫弁護士は日本政府承認の外国法事務弁護士となり、今後は日本において開業することも可能だ。また、日本国内での訴訟においても、日本の弁護士を介することなく、依頼人に直接法律上の見解を提供することが出来るなど、台湾の弁護士が日本において活躍する端緒となるだろう。